奴隷契約と専用首輪

鋭敏な嗅覚が捉えたふわりと漂うパンの香りで、セレナは目を覚ました。

朝の光が窓から柔らかく差し込み、部屋の中を穏やかな明るさで満たしている。
窓の外では、鳥たちのさえずりが響き渡り、青空が広がっている。
まるで、昨日の出来事すべてが遠い夢のように思えてくるほど、空気が澄んで、世界が美しく感じられた。

しかし、昨夜の事を思い出しセレナはすぐに昏い気持ちになる。
処女を奪われ、徹底的に快楽を植え付けられた。暴虐の行為は深夜まで何度も続いた。
ふと首筋を触ると、あの禍々しい首輪は既に外されているようだった。

(わたしはこれからどうなるのだろう・・・?)

セレナは勇気を振り絞り、ベットから起き上がろうとした。
だが、全身が重く怠い。特に腰から下は感覚が鈍く、まるで自分の体ではないようだ。
昨夜のダメージが、優秀な銀狼族の身体能力でもまだ回復しきっていないのだ。ただ・・・。

(無理やり犯された割には、あまり膣や女性器に傷がありません・・・)
セレナは昨日の過酷なセックスを思い出す。男女の性交というよりも、男からの一方的な責め。
グロダは、セレナの膣内を徹底的に蹂躙した。処女を奪われ、何度も絶頂させられて、何度も中出しされたのだ・・・。そして最後は泣きながら懇願して、やっと解放された。

(それなのにわたしの体・・・特に女性器は傷ひとつ負っていないようです)
グロダの責めに屈服して、そのまま意識を失うように眠ってしまったことは覚えている。
おそらく眠った後、グロダによって癒され、清められたのだろう。

(もう、あんな奴に屈服したくありません。絶対に隙を見つけて逃げ出して見せます)
グロダは女の体を知り尽くしており、どこをどうすれば女が狂うか知りぬいていた。
経験の無いセレナは、全く太刀打ちできず、数えきれない程の絶頂を極めさせられたのだ。

セレナは部屋を見渡す。グロダの気配はどこにもない。
ふとまた、パンの焼ける香ばしい匂いが、セレナの鼻腔をくすぐる。
(そういえばこのパンの匂い・・・)
グロダはもう目を覚まし、ひとりで料理をしているようだ。
首輪が無いと言っても、レベルを下げられ、能力も奪われている。
「はぁ・・・とにかく今は隙を伺い、脱出の糸口を見つけないといけません」
今の自分はか弱い女の子でしかないのだ。セレナは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

 

 

「ようやく目が覚めたか…」
グロダの声がして、扉を開け部屋に入ってくる。
手にはパンと軽い総菜の乗った二人分のプレートを持っている。

「おはよう、セレナ」

グロダは無表情のまま言った。その声に、セレナは少しだけ苛立ちが湧く。
この男は、あれだけ激しくわたしを凌辱したというのに、まるで何事もなかったかのように、平然としている。

キッと鋭い視線で、セレナがグロダを睨む。
部屋に差し込む朝の光が薄ぼんやりとした暖かさをもたらしていたが、その空気は冷たい緊張感に包まれた。
「何がおはようですか。気安く名前を呼ばないで下さい」
セレナは冷たい声で言う。だが、グロダに動じる様子はなかった。
「まあ、そういうな・・・朝食だ、椅子に座れ」
グロダがぶっきらぼうに言いながら、持っていた朝食のプレートをテーブルに置く。
二人用の小さなテーブルの上に、美味しそうなパンとスープが乗っている。
「いらな・・・」
セレナは断ろうとしたが、その瞬間彼女のその瞬間、クーとお腹が可愛らしく鳴り、空腹を控えめに主張する。
おそらく、昨日一日何も食べていないのだ。

(・・・仕方がない、空腹だといざというときに動けなくなる)
セレナは、しぶしぶベッドから起き上がり、自分が全裸である事に気が付く。
「・・・くっ」
慌ててシーツで体を隠し、ベッドを降りると、そのままテーブルの椅子に座った。

 

朝食のプレートには二人分のパンと、簡単なスープが付いていた。
クンっと匂いを嗅ぎ、優れた銀狼族の嗅覚で毒物や薬物が混入されていない事を確認する。

「・・・」
グロダは言葉を発することなく、自分用のパンを一つ取り食べ始める。
セレナは一瞬だけ迷ったが、結局はバツの悪い表情でパンを手に取った。そして、一口かじると、静かに食べ始める。
(・・・なにこれ、食べた事無い程、美味しい)
このパンはただのパンに見えるが、グロダの地球へのこだわりが詰まったパンである。
中世レベルのこの世界では、到底味わえない日本の味を再現するため、グロダが自ら『設定変更』を駆使し試行錯誤して作ったものだ。
(・・・本当に美味しい、こんなパン食べたことが無い)
セレナは夢中になって食べ始め、あっというまにパンを平らげてしまった。
グロダは特に表情を変えることもなく、自分のパンを齧りながら黙々と朝食を続けた。
テーブルを挟む二人の間に言葉はない。だが、その沈黙の中には、それぞれの思いがくすぶっていた。

 

食事が終わると、重々しい沈黙がテーブルを支配した。グロダはその沈黙を破るように口を開く。
「さて、セレナ。昨夜言った通り、お前にはここで一ヵ月、俺の調教を受けてもらう。お前が立派な牝犬になるための奴隷調教だ」
「・・・調教? ふざけるのもいい加減にして。わたしがそんなモノ受ける訳ないでしょう! 」
彼女の声には、強い怒りと誇りが込められていた。だが昨夜の事があるからだろう、青い瞳には不安の影が映っている。

グロダは、セレナの言葉を無視して、淡々と話を続けた。
「お前の部下――王国の騎士団の連中だ。優秀だがで王族やこの国の幹部からの評価も高い」
「・・・」セレナは、グロダの言葉に唇を噛む。
「一昨夜おとなしく帰った事で分かるように、奴らは今、俺の能力の支配下にある」
「・・・何をするつもり?」
グロダは薄く笑いながら、淡々と言葉を続ける。
「もしお前がここで従わなければ、お前の部下達に王宮内でクーデターを起こさせる」
「なっ!?」
グロダの言葉にセレナは絶句する。
「何言ってるのですかっ!?そんな事出来るはずがない!」
「お前の部下達は国王からの信任も厚く、武器を持って王宮に入れる。まず国王の御前会議に乱入し国王と大臣達を皆殺しだな。そして王妃や他の王族や後宮の女官達を人質にしながら王城の門を閉ざし籠城、各方面軍に決起を促しながら、隣の帝国に情報を流し侵略の手引きをさせる。良かったな売国奴として永遠に名が残るぞ」
グロダの冷たい声は抑揚もなく、まるで機械の作業手順を説明しているかのようだ。

「そっそんな・・・そんなの上手くいくわけないっ!」
セレナが叫ぶ。
グロダは、肩をすくめた。
「ああ、成功する必要はない。目的は王国中を混乱させることだ。そして、その混乱の果てにお前の部下たちは皆殺しになる。王族もこの王都も無傷では済まないだろうな。沢山の人が死ぬ。全部、お前のせいでな」
セレナの拳が震える。
「冗談言わないでっ!そんな事、絶対にさせません!」
「ならば、俺の調教を受けるか?」
「ぐっ・・・」セレナは言葉に詰まる。だがすぐに言い返した。
「そっそんな脅しに屈する訳ない! わたしは誇り高き銀狼族の騎士です!絶対に貴方なんかの奴隷にはならない!」
「そうか・・・残念だな」
グロダはサファイアのようなセレナの瞳を真っすぐ見ながら、冷ややかな声で言った。
セレナの目に、グロダの黒い瞳が映る。

いつかどこかで見た、絶望と終末の黒色。それを知覚した瞬間、セレナの魂に震えが走る。
(・・・この男は、本当にヤル。・・・本当に、わたしのせいで王国が滅ぶ。・・・わたしがここで従わないと)
「くっ・・・くぅっ・・・」
セレナの視界が揺らぎ、息が詰まる。

「さて、それでだ。お前がこれから一月の間、調教を受ければ、お前とお前の部下たちは全員無事に解放しよう」
グロダは無表情のまま言った。その言葉で、セレナの思考が一瞬停止する。

「・・・えっ?」

「なんだ?聞こえなかったか?お前が一ヵ月間、俺の調教を受ければ、全員を解放してやる」
「ほ・・・本当に?」思わず聞きかえす。
「ああ本当だ、主人と奴隷の契約は『絶対』だ」
グロダのその言葉には、有無を言わせない真実の重みがあった。

セレナは目を閉じ、深く考え込む。一か月。たったのそれだけの間だ。それだけ耐えれば、この絶望から解放される。
だがそれには、この悪魔のような男から受ける、耐えがたい屈辱に耐えなければならない。

セレナは目をゆっくりと開き、目の前の悪魔を見据える。そして・・・。

「・・・わかりました」絞り出すよう小さくつぶやいた。
「貴方に従います・・・一か月の間だけ」

「そうか、それはよかった。俺も無辜の人々が死ぬのはなるべく避けたいからな」
グロダは、無表情のまま言った。
「・・・一ヵ月だけです。それ以上は絶対にあなたに従いません!」
セレナは強い口調で宣言する。
「ああ、それでいい。なんなら一月後、逮捕でもなんでもしに来い」グロダは薄く笑った。
「・・・・っ」
セレナは唇を強く噛む。

「では契約成立だ」

そう言うと、グロダは懐から一枚の紙を取り出し、テーブルの上に広げた。

それは『奴隷契約書』だった。
「ここに署名しろ」
セレナは、その契約書を食い入る様に見つめる。

———–
『牝犬奴隷調教契約』
1.牝犬奴隷セレナは、主人であるグロダに絶対服従し、彼の命令には如何なる内容であっても従う。
2.牝犬奴隷セレナは、立派な牝犬になるため、主人であるグロダの調教を一切拒否せず、どれ程の変態的な行為であっても全て受け入れ、主人が望む時、いつでもどこでも性処理道具としての役割を果たすこと。
3.牝犬奴隷セレナが、主人の命令に背いた場合や反抗的な態度を取った場合、主人は牝犬奴隷セレナにいつでも、どのような罰でも与える権限を持つ。
4.牝犬奴隷セレナの肉体・精神・魂の全ては、調教期間中に限り主人であるグロダの所有物であり、主人の命令に従い、その身と魂を主人に捧げる。
ただし、調教期間の終了により、グロダは、セレナの所有権を放棄するため、妊娠や恒久的な肉体改造等は、牝犬奴隷本人が望まない限り実施しないこと。
5.牝犬奴隷セレナは、自分が牝犬奴隷であることを自覚し、常にその立場に相応しい言葉遣いや振る舞いを心掛けること。
6.牝犬奴隷セレナは、牝犬奴隷として相応しいように、常に全裸でいることを基本とし、主人の許可なく衣服の着用、私物を所持することを禁止する。
ただし、第8条に定める首輪と、主人の希望により牝犬奴隷が着用する衣服を指定した場合は、その限りではない。
7.牝犬奴隷セレナは、主人への反抗や危害を加えることを一切禁ずる。また、主人の許可の無い外出や他人との接触を禁じる。
8.牝犬奴隷セレナは、調教期間中は常に首輪を付けることを義務付け、主人の許可なく外すことは許されないものとする。
9.契約期間は、本契約締結より30日間とする。契約期間の終了後、その日を以て牝犬奴隷契約は終了し、主人であるグロダは牝犬奴隷セレナを奴隷から解放し、セレナは自由と権利を取り戻すものとする。また、グロダは同日をもって銀狼騎士団にかけた能力を解除し解放する。また、本契約の延長はこれを認めない。
10.牝犬奴隷セレナが契約期間中に死亡または精神崩壊した場合、本契約は終了となり、主人であるグロダは所有権を喪失するものとする。その場合、銀狼騎士団にかけた能力の解除および解放は行わない。
11.主人、牝犬奴隷の双方は、上記の契約に反した場合、いかなるペナルティも甘受するものとする。
上記の契約内容に同意し、主人・牝犬奴隷の双方によって署名する事により、本契約は成立し、その効力を生ずる。
主人 グロダ=キネルロス
牝犬奴隷
————

「なっ・・・これは、なんですかっ!?・
そのあまりにも屈辱的な文面を見て、セレナは絶句した。

「見ての通りだ。お前が調教を受ける条件が書かれている」
グロダは、平然とした表情で答える。

「こんな契約・・・絶対にできません!」
セレナは叫ぶように声を上げた。だが、その声に力はこもっていない。

「そうか?俺は別に構わんぞ。その場合、お前の部下は全員死ぬことになるがな」
グロダは淡々とした口調で言う。

「くっ・・・」セレナの顔色が青ざめる。
「・・・わかりました、この契約書にサインします」苦虫をかみつぶしたような表情で言った。

「ほう、誇り高い銀狼族のセレナ騎士隊長は何を一ヵ月されるんですか?」
彼女は唇を噛みしめ、数秒間沈黙する。男が何を望んでいるのか理解できているからだ。
「・・・一ヵ月間、あなたの調教をうけます・・・立派な牝犬になるための」
その声には、屈辱に満ちた覚悟が宿っていた。グロダは満足げに微笑み、揶揄するように言い放つ。
「そうか、ではこのペンを持て」
グロダはそう言うと、テーブルの上に置いてある万年筆をセレナに差し出した。

「・・・はい」
セレナはそのペンを手に取り、契約書の署名欄にサラサラと美しい字で自分の名前を書き込む。

 

牝犬奴隷 セレナ・ソティス・ルプス

 

(・・・これでもう後戻りはできない)

セレナは心の中でつぶやいた。そして最後に『牝犬奴隷』の部分に拇印を付ける。

「安心しろ俺は世界一の調教師だ。お前を従順で忠実な、主人を愛する『立派な牝犬』にしてやるよ」
セレナはその言葉に凍りつく。だがすぐに気を取り直し、毅然とした声で返した。

「そんなこと絶対ありません。誰があなたの思い通りにさせるものですか!」
その言葉に、グロダは満足そうにうなずいた。

 

 

 

セレナが屈辱に満ちた署名を行うと、グロダはどこからか昨夜の魔法の首輪を取り出しセレナに見せてきた。

セレナは昨夜この首輪をつけた時の事を思いだす、全身の力がぬけ、男のなすがままになってしまった。
そして処女を・・・。
受けてはいないが、強力な激痛を与える機能もあると言っていた。

黒革の首輪は禍々しいオーラが漂い、見ているだけで何かが心を蝕むような感覚に襲われた。
そして、昨日と違う点が一つ・・・鉛色のネームプレートが取り付けられており、そこには古代文字で「セレナ」と刻まれている。

その犬の様な屈辱的な刻印に気が付き、セレナの頭にカッと血が上る。
「その首輪を・・・わたしにつけるつもりですか?」
「ああそうだ。これがお前専用の首輪だ、牝犬らしくネームプレートを付けておいた」
グロダは首輪を指で回しながら、淡々とした口調で説明を始めた。
「これは『契約の首輪』だ。この首輪にはお前と俺の間で交わされた契約の遂行のための魔法が刻まれている」
「契約期間は30日だ。その間、お前は俺の元で調教を受ける。首輪はそれを象徴する道具だ」

冷たい声が、淡々と続けられる。
「この首輪をお前が外す方法は二つだけだ。一つは期間が満了すること。残りの30日間耐え抜けば、首輪は自動で外れ、お前の部下達も解放される」

セレナは、首輪を睨みつけながら聞いた。
「もう一つは?」
グロダはその問いに答えるように、指先でネームプレートを軽く叩いた。乾いた音が響く。
「もう一つの方法は、お前が心から俺を本当の『主人』だと認め、完全に屈服した時だ」
セレナの顔が屈辱に歪む。だがすぐに表情を引き締めた。

(屈服?そんなことしません!わたしは絶対に貴方に屈服なんてしない!)

セレナは心の中で叫ぶように思った。
だが、その思いとは裏腹に、彼女の体は小刻みに震えている。
(・・・怖い)
セレナの目がその首輪に釘付けになる。小さなネームプレートに刻まれた自分の名前が、不気味に輝いているようにさえ見えた。

それでもセレナは拳を握りしめ、グロダの冷酷な言葉を飲み込むと決意を口にする。

「・・・わかりました。銀狼族の誇りにかけて、わたしは30日間耐えてみせます。それでこの首輪も洗脳魔法も消えるんでしょう?」
セレナは強い意志を込めた目で、グロダを見据える。

「耐えることができたらな。今から30日間、お前が折れるのが先か、契約が切れるのが先か・・・楽しみだな」
セレナはグロダを睨みつけ、唇を噛みしめる。心の中で葛藤しながらも、誇り高き騎士としてこんな卑怯者には決して屈しないと強く誓う。
・・・この先に彼女の想像も出来ないようような、淫獄の日々が待っているとも知らずに。

 

 

 

 

セレナはあまりの屈辱の為か眩暈がした。
それを振りほどくように頭をふる。銀狼族の誇りであるピンッと張った狼耳が少し痛むような気がした。
銀狼族は尻尾は無いが、嚙み砕く為の牙と誇り高い狼耳を持つ。その誇りが少しだけ痛みを感じた気がした。

「さて、首輪を付けてやる。こっちに来い」
グロダは首輪をテーブルの上に置き、自分の足元に来るよう指示した。
セレナは一瞬ためらったが、渋々男の元に歩み寄る。そして、男の目の前に跪いた。

「首輪を取って渡せ」
グロダの指示に、机に置いてある黒革の首輪に、セレナは手を伸ばす。
白い指先が黒い革の首輪をそっと持ち上げた。革は柔らかくしなやかで、異様な光沢を放っている。
セレナはその首輪をグロダに捧げるように渡す。

(屈辱的だけど・・・仕方ない)
セレナは覚悟を決めると、ゆっくりと首を垂れ差し出した。

「着けるぞ」
グロダはセレナの首に、その首輪をゆっくりと巻き付けていく。
彼女の透き通る白い首筋に革の冷たい感触が触れると、ほんの一瞬、ビクリと体が震えた。
震えを押さえ込むように、セレナは両手で自分を抱きしめ、唇を噛みしめる。
首輪が彼女の首筋を包み込むにつれ、その感触が次第に彼女の意識を侵していく。革は思った以上に柔らかく、しっとりと肌に吸い付くような感覚を与える。
セレナの白く美しい首筋にグロテスクな首輪が巻き付く様子は、まるで隷属を象徴しているかのようだ。

やがて、首輪がしっかりと首に巻き付く。
そして・・・

カチリ

首輪が首筋にぴったりとフィットし、金具の音と共に閉じられた。
セレナは目を閉じ、背筋がピンと伸びるのを感じた。首輪の小さな施錠の音がセレナの頭の中で反響する。

その瞬間、魔力の波動が走り、周りの空間が歪むような感覚が襲ってきた。不安と快感が交じり合ったその感覚は、目の前で一瞬で世界が塗り替えられたような不思議な感覚を呼び起こす。

「うぁぁっ・・・ああっ」

思わず声にならないうめき声が漏れる。
膝がわずかに震える。だが、彼女は歯を食いしばり、なんとか自分を保とうとした。全身を駆け巡る首輪の感触はやがて内側へと侵入し、彼女の心の奥深くに何かを刻み込んでいくようだった。

 

「これで契約は完了だ」
グロダが淡々とした口調で告げる。

「・・・はい、ありがとうございます・・・」セレナは消え入りそうな声で答えた。

(・・・これから30日間、わたしはこの男の性処理奴隷になる)
首輪をつけられた瞬間から、その事を強く意識してしまう。

「良く似合っているぞ」
そう言ってグロダは鏡をセレナの前に差し出した。

「・・・っ!」
そこに映っているのは、銀狼族の誇り高き騎士ではない。漆黒の首輪を嵌めた牝犬奴隷の姿だった。

首筋を覆う黒革はしっとりと肌に吸い付き、白い肌になまめかしい光沢を放っている。

(・・・うぅ)
セレナはその卑猥さに目を背けずにはいられなかった。この首輪をはめられている限り、自分はこの男の性処理奴隷なのだ。その事実を否が応でも意識してしまう。

その黒い革は彼女の心を縛り付ける鎖のようにも思えた。
だが同時に、不思議と首輪の感触がしっかりと身体に馴染んでいる。首筋に巻きつくその黒革の首輪が自分と一体化したかのように感じられた。
まるで、過去からずっと自分がこの首輪をつけてきたような、不可解でありながらもどこか懐かしい感覚だった。

(・・・なんなんですか?この感覚は)

首輪を装着したときの魔力の波動は消えていったが、セレナの心には妙な違和感が残り続けていた。