牝犬調教:最終日
牝犬奴隷調教の日々がもう何日続いただろう。繰り返えされる淫悦と羞恥の日々の中で、いつしかセレナの中から日にちの感覚が失われていた。
だが当然、いつか『その日』はやってくる。
その日、朝の日課の排泄と奉仕を終え、セレナとグロダは昼食をとっていた。
意外な話だがグロダは料理が上手く、基本的に自分で作って食べている。
それは日本人としての肥えた舌を満足させる料理が、こちらの世界には少ない事が原因であったが、生まれつき硬いパンの粗食になれたセレナにとっては、毎食が奇跡のようなご馳走であった。
・・・ある点を除けば・・・
セレナの牝犬奴隷の生活では、食事も当然に調教の一部である。
食卓ではいつものように全裸で、グロダの席のすぐ横に座る。そしてグロダに横抱きで寄りかかるように、身体を寄せる。この姿勢が一番食べ易いとこの数日の調教で思い知っているからだ。
基本的に全ての牝犬奴隷調教は『挨拶』から始まる。だからこの食餌調教も奴隷の挨拶からはじまった。
「ご主人様、セレナはご主人様の味が染みついたものでなければ美味しくありません。 ご主人様が咀嚼した温もりごと、この口の中をご主人様の味で満たしてください」
そう、この屋敷ではセレナは食料も飲料も全て、グロダの口移しで与えられている。
初めは抵抗があった。男の口で咀嚼した物など、汚らし過ぎてとても食べられないと思った。しかし、グロダの罰と快楽を巧みに織り交ぜた調教は、セレナの抵抗を徐々に削り取っていった。
「ほら、口を開けろ」
そう言ってグロダはスプーンでスープをすくい取り、それを自分の口に含む。
「んっ・・あーんっ」
セレナが可愛らしい口を精一杯に開いて、差し出す。するとグロダはその口を覆うように唇を重ねると、舌を絡ませながらスープをセレナの口内に送り込む。
「んっ・・・んくっ・・・こくっ♡」
最初の方は何度も吐き出していた、だが今ではすっかり慣れたものだ。セレナは口に流し込まれたスープを、まるで親鳥から餌を与えられる雛鳥のように、嬉しそうに飲み干す。
そうしてゆっくりと時間をかけて咀嚼し飲み込むと、最後にグロダの舌に残った残滓まで丁寧に舐め取っていく。
(あぁ・・・美味しい)
セレナは、口の中に広がる主人の唾液とスープの混じった濃厚な味わいに、うっとりとした表情を浮かべる。
そして次の一口が差し出されるまで口を開いてじっと待ち続けるのだ。
「ほら、次だ」
グロダは今度はパンを千切ると自分の口に運び、セレナに聞こえるように音をたて何度も口の中で咀嚼する。
クチャクチャというその下品な音だけで、もうセレナは興奮を覚えてしまうようになっていた。
「ほら、行くぞ」
そう言っってグロダは、期待するように目を潤ませ口を開けて待つひな鳥に、そのまま唇を重ねパンを流し込んでいく。
液体のスープと違い、ご主人様に咀嚼されてグチャグチャになったパンは、濃厚に主人の唾液の味と温もりを宿しており、味と温もりがセレナの口の中いっぱいに広がっていく。
「んっ・・・んんっ・・・くちゅ♡こくっ♡」
主人に口移しで食べ物を与えられるという行為に、セレナは本当に自分が愛されているかのような錯覚を覚えてしまう。

(あぁ・・・幸せ)
そんな幸福感に浸りながらも、パンを飲み込んだ後はすぐに次の一口を求めて口を開くのだった。
「・・・どうしてこんな面倒な食事をしているか分かるか?」
一通りの食事を終え、食後のコーヒーを今度はセレナからグロダに流し込んだ後、グロダがセレナに問いかけた。
口移しでの食事は、当然男女の体が密着する必要がある。セレナは美しい裸身をグロダの胸に埋めながら、女としての幸福な一時を味わっていた。
「それは・・・わたしの食事の作法がなっていないからでしょうか?」
セレナは、少し不安げな表情で答える。確かに、グロダに口移しで食事を与えられるという行為は、とてもじゃないがまともな人間のする行為ではない。しかしそれでもこの調教は必要な事なのだと思いたい。
「それはな、お前が俺の所有物であると自覚させるためだ」そう言ってグロダはニヤリと笑う。
「はい、わたしはグロダ様の所有物です♡」
すぐにそう答えながらも、セレナの顔は恥ずかしさで真っ赤になった。
そんな事を当たり前に思ってしまうほど、調教された自分が恥ずかしかったのだ。
(でも・・・だって・・・わたしはもうご主人様のモノなんだもの)
そう心の中で言い訳しながら、セレナは恥ずかしさを誤魔化すようにグロダの胸にしがみついた。
「この食餌調教は、お前を俺の牝としてマーキングするために行っている」
「マーキング・・・ですか?」
セレナは首を傾げる。確かにこの食餌調教では、グロダの唾液と咀嚼した食物が混ざったものを食べて血肉にしている。それはつまり、自分の中にご主人様の匂いを染み付けているという事なのか?
「食事を口移しで与える事で、俺とお前の口内細菌や腸内細菌が同一化していく、すると肉体が徐々に変化し体臭が俺と似た構成に変化する。つまりはお前の体臭が俺に染まって行くわけだ」
「わたしの体臭がご主人様と同じに・・・」
セレナは、自分の腕を鼻の前に持ってくるとクンクンッと匂いを嗅いだ。確かに少しご主人様の匂いがするような気がした。
「臭いに敏感な銀狼族のお前でも、流石にまだ気が付かないか。だが、臭いは本能に直結する。今後、初めて会う人間でもお前が俺のツガイである事を無意識に認識するようになる、こうやってマーキングしておけば他の男がお前に手を出すことは無くなるだろうな」
「ご主人様の・・・ツガイ・・・」
セレナはその言葉を心の中で反芻する。それはつまり、自分はもう完全に世界からご主人様の所有物として認識されるという事だ。嬉しさが込み上げてくると同時に、胸が熱くなるのを感じた。そしてそれと同時に子宮が熱く疼く。
「あっ・・・♡」
思わず甘い声を漏らすと慌てて口を塞ぐように手で押さえた。
その様子を見たグロダがククッと笑うと耳元で囁いた。
「なんだ?感じたのか?」
「はい・・・ご主人様にマーキングされて、所有物扱いされて、わたしは幸せな牝犬奴隷です」
セレナは頬を上気させながら、うっとりとした顔で答える。
「そうか、ならもっとマーキングしてやろう」
そう言ってグロダは再びセレナの唇を奪うと舌を絡めてきた。そしてそのまま唾液を流し込む。セレナはそれをゴクッゴクッと喉を鳴らして飲み干す。
「んっ・・・んくっ・・・こくっ♡」
(あぁ・・・ご主人様の味がする)
もうすっかりデープキスの快感に病みつきになっているセレナは、積極的に舌を絡ませ主人の舌を歓迎する。
それはまるで主人に甘える子犬のような仕草だった。
しばらくして、満足したのかグロダは口を離す。二人の間に銀色の橋がかかる。
「はぁっ・・・んっ・・・ふぅ♡」
セレナは名残惜しそうに舌を突き出し、唾液の糸が切れると同時に甘い吐息を漏らす。トロンとしたその瞳は、完全に牝犬奴隷としての悦びに染まっていた。
「よし、いい子だ」
そう言ってグロダはセレナの頭を優しく撫でる。セレナは嬉しそうに目を細めると、もっと撫でてと言わんばかりに頭をすり寄せてきた。
そんな可愛らしい反応を見せる牝犬奴隷の姿を見て、グロダも満足そうな笑みを浮かべるのだった。

昼食後いつもなら、ここから本格的に男女の体を貪りあう淫らな調教の時間が始まるのだが、『その日』は違っていた。
食卓でご主人様に抱き着きながら、食事の後の幸福な一時に浸ってたセレナに、グロダが全く想定していなかった事を告げた。
「セレナ、今日は調教何日目か分かるか?」
「へ?・・・今日ですか?」
セレナは突然の質問にキョトンとする。
「そうだ、お前が俺と契約し、調教を開始してから何日目だ?」
普通の時間経過なら、当然分かる。だが何度も記憶を消され、調教を受け続け、散々記憶を上書きされて来たセレナにとって、今その問いは難問だった。
「・・・すみません、分かりません」
グロダはニヤリと笑うと言った。
「今日は、調教30日目、契約の最終日だ」
「え・・・?」
セレナは驚きのあまり言葉を失った。突然の事に理解が追いつかない。
「契約通り、今日の24時でお前を解放する。明日の朝にはお前は自由だ、この屋敷をでて自宅へ帰れ」
「あ・・・あぁ・・・」
セレナは呆然とした表情で、ただ言葉にならない声を漏らした。
「どうした?嬉しくないのか?」
その言葉にセレナは震えた。確かに解放は嬉しい。
でも、同時に恐怖を覚えてしまったのだ。『ご主人様』を失う恐怖を・・・。
セレナは震える声を口にだす。
「う・・・嬉しいです。嬉しいんです・・・・でも・・・」
「でも?・・・なんだ?」
「・・・まだわたしはご主人様の奴隷でいたいです!もっと、もっと調教して欲しいんです!」
セレナはすがるような目つきでグロダを見る。その目には大粒の涙が浮かんでいた。
だがグロダはそんなセレナの願いを一蹴した。
「駄目だ、主人と奴隷の契約は絶対だ。契約が終わればお前は俺の奴隷ではなく、自由になる」
「そ・・・そんなぁ・・・」
セレナは泣き崩れるように、グロダの胸に顔を埋めた。
頭の中を様々な思いが駆け巡る。
今までの調教の事。
表の世界の仲間達の顔。
こんな牝犬奴隷の淫悦を味わった体で、騎士団に戻れるのだろうか?
それに・・・なにより、ご主人様の事も・・・
「うぅ・・っ、いやっ・・・あぁぁ」
セレナは嗚咽を漏らす。
グロダはそんなセレナの顎を掴んで顔を上げさせた。
「どうした?泣いているのか?」
「はい・・・わたし、ご主人様と離れたくありません」
涙をポロポロ流しながら訴えるように見つめるセレナを、グロダは優しい手つきで頭を撫でた。
すると今まで我慢していたものが堰を切ったかのように溢れ出し、セレナは声を上げて泣き出してしまった。
「う・・・うわぁああん」
まるで子供のように泣きじゃくるセレナを、グロダはそっと抱きしめる。そして耳元で囁いた。
「泣くな・・・今はそう言っているが、娑婆に帰ればすぐにこの調教の事など忘れる。むしろ忌まわしく憎しみさえ覚えるだろう」
グロダは、今までの無数の奴隷調教の経験から、その事に確信をもっていた。
一月程度の集中的な調教では、いくら『設定変更』を駆使して淫獄の底に堕としても、セレナのような強く気高い女は日常の絆の中で必ずその鎖を断ち切ってくるのだ。
「・・・そんなことありませんっ!」
セレナは、涙に濡れた目でグロダを睨むと、その胸に顔を埋めた。
「フッ、セレナ忘れるな、まだ今日までは契約が残っている、今日の24時まではお前は俺の牝犬奴隷だ」
「・・・はい」
「よし・・・」
そう言うとグロダは、セレナの顎をクイッと持ち上げると唇を奪った。
「んっ・・・ちゅっ・・・んんっ」
そしてそのまま舌を絡ませる。すぐにセレナも積極的に舌を動かし、お互いの口内を貪るように激しく絡み合う。
やがてどちらともなく口を離すと、唾液の糸が二人の口の間に橋を作る。
セレナはその唾液の橋が、ご主人様との絆の糸に感じた。
「今日は徹底的にセックスで女の淫楽を刻み込んでやる。そうだな、100回はイカせてやる。」
「はい、ご主人様。わたしを牝犬奴隷として徹底的に服従させてください♡」
そう言ってセレナは妖艶に微笑むと、再びグロダの唇を奪う。
そしてその夜、セレナは今までで最高の快感と幸福感を味わいながら、最後の調教に身を委ねたのだった。